道立羽幌病院の呼吸器外し事件 |
道立羽幌病院で、救急患者として搬入された90歳の男性を蘇生し、いったんは呼吸器を装着した医師が 脳死の状態と判断、家族の同意のもと、呼吸器をはずした行為が事件として報道されている。 北海道新聞 ![]() 朝日新聞の報道 北海道羽幌町の道立羽幌病院(佐藤卓院長)で2月中旬、当時勤務していた女性医師(32)が 無呼吸状態に陥った男性患者(90)の人工呼吸器を取り外して 死亡させていたことがわかった。医師が家族に「脳死状態は変わらない」と告げ、 家族が延命措置の中止を希望したという。 しかし、実際に厳密な脳死判断をしていなかった疑いがある。 北海道警は殺人容疑で、医師から事情を聴くなど捜査を始めた。 病院側の説明によると、男性患者は2月14日午後0時40分ごろ、 自宅で昼食をとっていた際、のどに詰まらせ、家族が救急車を呼んだ。 同1時10分ごろに病院に搬送された際には、心肺停止状態だったという。 医師が蘇生措置をした結果、約30分後に心臓は動き出したが、 自発呼吸はできない状態のままだった 医師は自発呼吸停止と瞳孔の拡大から脳死状態と判断し、 患者の長男に告げた。その際、長男の希望で人工呼吸器を装着したという。 患者は翌朝、改善の兆しがないまま状態は悪化。 医師が「状態が悪く、脳死状態は変わらない」と家族に告げると、 「元に戻る希望がないなら延命措置はやめて欲しい」とこたえた。 午前10時40分ごろ、親族3人の立ち会いのもと医師が呼吸器を外した。 男性は約15分後に死亡したという。 亡くなった時点で、医師本人が医師法に基づき、 「異状死」として羽幌署に電話で報告したという。 医師は別の医療機関から02年5月から先月末まで、 羽幌病院に派遣されていた。 家族の気持ち・・・道新の続報 「女性医師、なお信頼」 死亡患者家族、病院説明を肯定 羽幌病院の呼吸器外し 2004/05/15 01:30
【羽幌】留萌管内羽幌町の道立羽幌病院の女性医師(32)=今年四月まで勤務=が今年二月、男性患者(90)の人工呼吸器を取り外し、
男性が死亡した問題で、この男性と同居していた同町の長男(67)夫婦は十四日、
北海道新聞の取材に対し「先生(女性医師)を信頼する気持ちに変わりはありません」と述べ、
病院側の説明と同様、医師が人工呼吸器を外したのは
家族の気持ちをくんでの行為だったと語った。
夫婦によると、父親は今年二月十四日の昼ごろ、
自宅で介護を受けながら食事をとった後、別室に移動。その後、
倒れているのが見つかった。同病院に搬送後、
心臓マッサージなどで父親の心臓が動いたことから、
長男が人工呼吸器の装着を希望した。
しかし、意識が戻る見込みはないと説明され、
医師が「お金もかかるし、どうしますか。相談したらどうか」
などと言ったため、親族で呼吸器の取り外しについて話し合ったという。
女性医師は父親が以前、同病院に入院して以来の主治医で、
「ずっと世話になっていた」(長男)。四十九日の法要時など同病院を離任する前に二度、
長男宅を訪ねてきた。
夫婦は「優しくよく診てくれて、本当にいい先生でした」と感謝し、
医師に処分がないよう願っている。
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(筆者の意見) 道新の最初の報道はこの医療行為を「安楽死」としてとらえ、その条件を満たしているかという 議論をおこなっている。「安楽死」とはあくまで、死亡させる医療行為であり、 今まで問題になった事件は筋弛緩剤で呼吸を止めたり、KCLの注射で、心臓を止めた行為である。 今回、呼吸器による治療をやめたのは、医師としては助からない状態、もしくは高度の 脳障害が生じている状態と考え、「尊厳死」を 家族に提案し、同意を得たと解釈できる。呼吸器を止めることは、殺人行為ではなく、 治療をやめたにすぎない。結果的に呼吸機能の回復していない患者さんが死んだ。 この場合、「尊厳死」の判断が正しかったかという観点で 議論すべきだと思う。僕にはこの先生は良心的で、勇気のある先生に思える。 |
殺人容疑で医師を起訴?ー 延命治療の中止行為で始めての書類送検 ー |
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羽幌呼吸器事件・・・ 起訴困難呼吸器外しで起訴困難 因果関係なしと鑑定羽幌病院事件で旭川地検 記事:共同通信社 提供:共同通信社 【2006年4月7日】 |
北海道立羽幌病院で2004年2月、女性医師(34)が男性患者=当時(90)=の人工呼吸器を外し死亡させたとして殺人容疑で書類送検された事件で、複数の医師が「呼吸器を外さなくても数十分後には死亡していた」との鑑定結果を旭川地検に提出していたことが6日、分かった。検察当局は「呼吸器外しと死亡には因果関係が認められない」として、医師を起訴するのは困難と判断したもようだ。
ただ、終末期医療をめぐり、富山県の射水市民病院で医師が人工呼吸器を取り外し7人が死亡した問題が発覚したため、厚生労働省による延命治療中止に関する指針作りの状況を見ながら最終判断する。
薬物などを投与する「積極的安楽死」ではなく、延命治療を中止する行為について刑事責任が問われた全国で初めての事件で、検察の判断が注目されていた。 これまでの調べでは、医師は羽幌病院に勤務していた04年2月15日午前10時40分ごろ、自発呼吸のない患者の人工呼吸器を外し、患者は約15分後に死亡した。14日昼に食事をのどに詰まらせ心肺停止状態で搬送されていた。 北海道警は05年5月、(1)他の医師の意見を聞かずに1人で判断した(2)患者の同意がなく、家族も患者の意思を十分理解していたとは言えない-として医療行為を逸脱していると判断し、書類送検した。 旭川地検は複数の医師にカルテなどの鑑定を依頼。死亡直前の状態について「血圧が極度に低下しており、治療の施しようがなかった」との結論を得た。医師の中には「呼吸器を外さなくても20分以内に死亡していた」との意見もあった。女性医師は事前に家族に十分な説明をし、同意を得ていたという。 延命治療の中止が許される要件として、横浜地裁は1995年、(1)死が避けられない末期状態(2)患者の同意か、家族の意思表示がある-などを示している。 |
筆者としては、当然の結果と考える。新聞記者も警察もいいかげんに発言せず、真剣に勉強してほしい。 |