「 春 」

ボッティチェリ


 イタリア・ルネッサンスの傑作「春」(プリマベーラ)。 中心は愛と美の神ヴィーナス、左は三美神、右端の西風の神ゼフェロス、 ゼフェロスから逃れようとしているのは大地の精クロリス。クロリスはゼフェロス の愛を受け、その左に描かれている「花の女神フローラ」に変身した場面といわれる。 他にも解釈もあるというが、花の首飾りをし、花を身にまとった「花の女神フローラ」 は真紅のバラ・ガリカをまいている。バラは美しいヴィーナスに対抗して大地が創造した花といわれ、 同じくボッティチェリの名画「ヴィーナス誕生」では白いバラ・アルバが描かれている。
 花の女神フローラ(Flora)
 ギリシャ・ローマ神話に出てくる花の女神フォローラは花の冠を戴き、山羊の角(豊饒(ホウジョウ)の角)を持った 美しい女神である。この角は美しい花を咲かせる魔力をもっているという。英語の花(Flower)の語源 である。
 ある伝説では、女神フォローラは処女のままで、男と交わらなかったが、あるとき、子をみごもさせる 花にふれて子を宿してしまう。こうして生まれたのが、マールスという軍神であるという。 美しい女性は内に強い男を産む力を秘めているのかもしれない。子をみごもさせる花とは、 どんな花なのか、興味はあるがわからない。