登山は危険なスポーツ?

 登山は危険なスポーツだろうか?スポーツをする中高年者に とって、急性心不全に代表される急病による突然死は大きな不安材料です。
 種々のスポーツを比較した急死発生頻度の医学論文の報告はきわめて少なく、ここでは 少し古いデータですが、平成3年に厚生省で行われた健康増進調査研究事業の研究結果を紹介します。
 参考文献 村山正博:「心臓性急死の実態と機序」(日本医事新報 No3579 平成4.11.28)
表1 日常生活活動別の急死頻度
 まず、日常生活活動における急死の頻度をみてみましょう。表は平成2年に東京都監察 医務院にて調べられた、平素健康と思われていた人679例(男性471名、女性 208例)の急死の集計です。総数としては、睡眠時間は長いので睡眠中に亡くなる人が多い。 つぎは、入浴です。活動時間、参加人数で補正して危険率(1億人中、時間あたりの死亡数) で比較すると、40歳から59歳までは睡眠中と比べてスポーツ中は約4倍の危険があります。 60歳以上では睡眠と比べて、排便、入浴は7から10倍の危険です。いずれの年齢に おいても歩行は睡眠と同じ程度の危険しかなく、ウォーキングはきわめて 安全な運動といえるでしょう。
 実際にスポーツ中にどの程度の頻度で起こるか推定してみると、 40歳から59歳の人で、一回数時間スポーツをするとして、100万人が100回くらいの プレーを行っているとき一件起こることになり、決して少なくない数字です。
 日常生活    0−39歳40‐59歳(危険率)60歳以上(危険率)全体
 1 睡眠       63人  71人(0.8)   97人(1.8) 231人
 2 食事        0    2 ( ー )   13 (1.1)  15 
 3 飲酒        2    7 ( ー )    2 ( ー )  11 
 4 排便        1    5 (2.4)   17(15.5)  23 
 5 家事・支度     0    5 ( ー )   14 ( ー )  19 
 6 入浴        4   10 (1.6)   60(18.3)  74 
 7 談話        3    3 ( ー )    5 ( ー )  11 
 8 性行為       1    4 ( ー )    2 ( ー )   7 
 9 精神活動      2    2 ( ー )    5 ( ー )   9 
10 スポーツ      3    7 (4.1)    1 ( ー )  11 
11 作業労働      5   26 ( ー )   12 ( ー )  43 
12 歩行・階段昇降   1    6 (0.6)   10 (2.0)  17 
13 乗車        3    8 ( ー )    4 ( ー )  15 
14 その他      11   36 ( ー )   62 ( ー ) 109 
15 不詳        9   11 ( ー )   20 ( ー )  40 
16 休息・休憩     6   13 (0.2)   25 (0.6)  44 
    合計     114  216        349       679 
  (−)データの記載のないもの 危険率( /億人・活動時間 )

表2 スポーツ種目別の急死危険率
 次に、スポーツ中の急死の頻度をみてみます。これは1984年から1988年の5年間 にスポーツ中に急死し、警察に届け出のあった645例を集計したものです。 男性545名、女性100名で、男性は女性の5倍以上死んでいます。女性は強い!めったに死なない!  死亡原因の85%は心臓死と考えられ 、脳血管系疾患は8%、大動脈瘤破裂 1.4% 呼吸器疾患1.1%とつづきます。50歳代までは種目によってそれほど 大きな差はありませんが、60歳以上ではゴルフと登山の危険率が急に高くなっています。 これは、ゴルフはもともと病気をもっている人も参加している事情によると考えられるようです。 逆に、高齢でもテニス、水泳のできる人は本当に健康なのかもしれません。 登山はランニングと比較して突然死の危険が50歳代までは1.8倍、60歳以上では7.4倍もあります。 登山はやはり危険なスポーツに属するといえるでしょう。
スポーツ
 種目
40‐59歳60歳以上
     死亡数 危険率 相対危険率 死亡数 危険率 相対危険率
 ゲートボール  (−)   (−)   (−)   44人 15.2  1.6
 ゴルフ  41人  6.5   0.6  40  73.2  7.9
 ランニング 33  11.3   1.0   18   9.3  1.0
 登山 11  20.5   1.8   11  69.0  7.4
 水泳 14   6.8   0.6    8  12.1   1.3 
 ダンス  (−)   (−)   (−)    8 15.2  1.6
 テニス   8   3.4   0.3    7   7.5   0.8 
 スキー  12  21.0   1.9   (−)   (−)   (−) 
 野球  10  13.0   1.2   (−)   (−)   (−) 
 卓球   6   8.0   0.7   (−)   (−)   (−) 
 剣道   6  28.7   2.5   (−)   (−)   (−) 
  (−)データの記載のないもの 危険率( /億人・活動時間 )
    相対危険率:各年代のランニングを1.0として算出
*ハムちゃんの独り言* 登山はゴルフより危険でないよ??。それはまちがい。 心臓病を持っている人も健康のためと称してかなりゴルフをしていますよね。太った人もね。(ゴルフをする人、ごめん) それからみたら、登山をしている人は健康そのもの。 それでも、データをみるかぎり登山は危険なようだ。これに滑落、迷子などの事故を 加えるとますます危険だ!!! 危険であるからこそ、日頃から健康に注意し、危険を避けるべく 細心の行動をするから登山は魅力があるのだ!?。 でも、皆さん気をつけましょうね。