トムラウシ山の遭難事故

 平成14年7月11日、12日、大雪山・トムラウシ山で遭難事故が起こりました。相次いで2パーティが、 遭難し、それぞれのパーティで1名、計2名の方が亡くなりました。とても悲しい事故で、残念で たまりません。同じような事故が起こらないことを心から願って、不明なことも多いのですが、 新聞報道から概要を報告いたします。あくまで新聞報道をもとにしているので、事実と異なる内容があるかもしれません。 もしありましたら、ご連絡いただけたら、訂正させていただきます。 (北海道新聞 平成14年7月13日朝刊、夕刊、14日朝刊、16日朝刊。朝日新聞 13日夕刊、14日朝刊から)


 

1.愛知県 「ふわく山の会」女性中高年パーティ 4名


     登山計画:層雲峡ー白雲岳避難小屋ーヒサゴ沼避難小屋ートムラウシ山ートムラウシ温泉

  9日 層雲峡より入山 白雲岳避難小屋(泊)
 10日 五色岳ー化雲岳ーヒサゴ沼避難小屋(泊)
 11日 午前5:30 ヒサゴ沼避難小屋からトムラウシ温泉へ下山開始
            天候が悪く、「怖いから小屋にとどまろう」という声もあったが、
            天候回復の見込みなく、食料なども不足するため下山を決定したようだ。
            この日ヒサゴ沼避難小屋には9パーティほどいたが、下山するパーティが多かった。
            ただ、朝からKさんは調子がわるそうだった。
            いつも先頭を歩いていたが、この日は他の人にまかせる。

     途中、北沼分岐で道を誤り、山頂を迂回する予定であったが、
     トムラウシの山頂へ向かってしまう。
     午前11時30分ごろ トムラウシの山頂着
     下山途中Kさん転倒、顔と脚にけが。その後は手をつないで歩行。
     山頂から2Km下ったところで、Kさん(59歳、女性)動けなくなる
            Kさんは「先に行ってください。」と言う。
            ツエルトと寝袋にくるまり、救助を待つこととする。

     1名が付き添い、他の二名は下山再開
 12日 午前 5:30 二名が自力下山。
             ヘリコプターは悪天候で動かれず。
     午前10:35 救助隊がKさんを発見、意識不明。
     午後 2:50 付き添った人が救助隊に付き添われて下山。
 13日 正午すぎ    ヘリコプターでKさんを収容、死亡確認。
              低体温による脳梗塞とみられる。
 

2.福岡県 登山グループ 8名(40−60歳代) 公認ガイドが企画、引率


     登山計画:トムラウシ温泉ートムラウシ山ーヒサゴ沼避難小屋ー白雲岳避難小屋ー旭岳温泉

 11日 トムラウシ温泉から入山
     (この日の行動不明・・・山頂近くでビバークか?)
            11日、北海道に台風が接近していた。
            ガイドは「台風は北海道に近づくと、温帯低気圧に変わることが多いので、
            勢力が弱まる。」と判断したようだ。
            しかし、入山後は天候が急激に悪化する。
            ガイドは今回が2回目のトムラウシ登山で、
            ガイドは北海道の山を熟知していなっかたようだ。
            入山届も提出していなかった。

 12日 午前7時半過ぎ、グループの男性の携帯電話から
     「トムラウシ山北側でSさん(58歳女性)が衰弱し、動けなくなる。」との110番通報。
     Sさんを寝袋などで防寒し、他の7名はヒサゴ沼避難小屋に避難したもよう。
           ガイドも他のメンバーも衰弱しており、
           Sさんを一人残して、沼避難小屋に向かうよりしかなかったようだ。

     救助隊が向かうも悪天で現場まで到着できず。
     避難中の7名の中で3名は衰弱が強いとのこと。
     ヘリコプター動かれず。
 13日 早朝より、   救助活動再開。
     午前9時40分 ヒサゴ沼避難小屋から1名がヘリコプターで救助される。
             さらに、2名がヘリコプターで救助される。
     午前10時前  救助隊がトムラウシ山頂北側100m付近でSさんを発見。
     昼過ぎ     Sさんをへりコプターに収容、死亡確認。凍死とみられる。
     午後2時45分 4名は自力で天人峡温泉に下山

*ハムちゃんの独り言*
 @とても悲しい出来事です。山は晴れていると天国のようですが、荒れると地獄です。今回は台風6号 のため、10日から12日は激しい風雨であったといいます。北海道の2000m級は本州の3000mに相当するのは事実でしょう。 それにしても、道外からの登山者は無理をしすぎると思います。
 A当日の行動として、トムラウシは最後の登りはかなりきついです。 今回は悪天の中、2パーティとも結果的に山頂まで行ってしまったようです。 もし、せめて、迂回できたらどうだったか?とふと考えています。
 B救助活動の件では、以前、トムラウシの山頂からは携帯電話が通じました。今回、緊急通報が遅れているように思います。 各パーティは前もってどのように緊急連絡方法を考え、実際にどのように実行したか?また、 Kさんの救助隊は12日にKさんの現場まで到達していて、 Sさんの現場までそんなに遠くないようにも思えます。悪天候のもと、同時に2名の救助活動は不可能かもしれませんが、 どのような体制で2件の救助活動が行われたか?少し気になります。
 C福岡県のパーティには、公認ガイド(46歳)が引率していました。大きな責任があると思います。 彼自身も衰弱しヘリコプターで救助される気の毒な状況ですが、次の点で、大きな問題があると思います。 a.悪天候で決行したこと。b.このパーティが縦走の予定にもかかわらず、ツエルトを携帯していなかったこと c.入山届を提出しなかったこと。d.当日の行動(山頂をめざしたか?)および、緊急事態の対処と 救助依頼の時期。もちろん、すべてがガイドの責任とはいいませんが、登山ではリーダーには、つねに大きな責任が あるはずです。
 D遭難した方は、気温の低下と、風雨で急速に体温が低下して、衰弱したようです。暴風雨のときは 本当に気をつけなくてはと、つくづく思います。