山の名前とアイヌ語(3)

― まとめ ―

(2003.4/24 C)

 北海道のアイヌ語の山の名前で、(1)では生き物としての 山、(2)では川に由来する山の名前をみてきたが、ここではよく使われる言葉をまとめてみよう。 参考文献:知里真志保著「アイヌ語入門」(北海道出版企画センター)、北海道新聞社編「北海道百名山」、山田秀三著 「北海道の地名」「アイヌ語地名を歩く」(北海道新聞社)、 更科源三著「アイヌ語地名解」(みやま書房)、他


山名によく使われているアイヌ語


(1)「カムイ」(神)のつくもの

         カムイに関係する山名の山は北海道内に18座もあるという。
         カムイは通常「神」と考えるが、単なる「神」というより、
         「魔」の観念で用いられていられ、神事に関係することが多い。
         有名な知床・カムイワッカの滝も飲めない「魔の水」の滝
         と訳した方がぴったりするという。

      カムイヌプリ(摩周岳)       「カムイヌプリ」 (神・山)
      神威岳(カムイダケ、日高)    「カムイ・ダケ」  (神・山)
      神居尻山(カムイシリヤマ、浦臼)「カムイシリヤマ」(神・山)

(2)「ヌプリ」「シリ」(山)のつくもの

      ニセコアンヌプリ 「ニセイ・コ・アン・ヌプリ」(絶壁・向かって・いる(川の)・山)
      イワオヌプリ    「イワオ・ヌプリ」     (硫黄・山)

      幌尻岳      「ポロ・シリ」  (大きい・山)
      利尻岳      「リ・シリ」    (高い・山、島)
      ピンネシリ(浦臼)「ピンネ・シリ」 (男・山)

         雄阿寒岳、尻別岳も「ピンネシリ」と呼ばれていた。

(3) 「ベツ」(「ペッ」Pet)、「ナイ」(川)のつくもの

      芦別岳      「ハシュ・ペツ」「アシ・ペツ」  (潅木の中を流れる川)
      戸蔦別岳     「トッタ・ベツ」  (箱・川)
      忠別岳       「チュプ・ペッ」 (東・川)
                 「チウ・ベツ」  (波たつ川)
                  「チュク・ペッ」  (秋・川)サケが捕れる川か?
      愛別岳      「アイ・ペッ」      (矢・川)矢のように早い急流
      暑寒別岳     「ショ・カ・アン・ペッ」 (滝・の上に・ある・川)
      札内岳      「サツ・ナイ」      (乾いた川)

(4)「ウシ」(us-i)(・・・が群生するところ、・・・あるところ)のつくもの

      トムラウシ山   「トンラ・ウシ」(水草、ミズゴケのある川)
                          (湯の花、水垢のある川)
      羅臼岳      「ラ・ウシ」   (低い処・にあるもの(川))
                          (臓腑・のあるところ)  クマや鹿、魚などを解体?
                          (蔦・の多いところ)
      風不死岳     「フップ・ウシ・ヌプリ」 (トドマツ・群生する・山)

(5)「ニセイ」(絶壁、峡谷)

      ニセコアンヌプリ   「ニセイ・コ・アン・ヌプリ」  (絶壁・向かって・いる・山)
      ニセイカウシュペ山 「ニセイ・カ・ウシ・ペ」    (峡谷・の上・にいる・もの(山))