クマの寅次郎のこと

 今年(平成14年)は春クマ駆除が13年ぶりに再開される。このことを念頭に 北海道新聞のコラム欄(卓上四季)にヒグマの寅次郎ことが掲載された。考えさせられる 内容なので転載してみました。さて、愛される寅さんでしょうか? (北海道新聞 平成14年3月13日より)


 「クマがこれだけ気を使っているんだから、われわれの側も考えなきゃね」。 岩手大の青井俊樹教授が言っている。札幌で開かれた講演会での言葉。

 6年前、北大苫小牧演習林長だった青井さんは、1頭の雄グマに電波発信機をつけ、 徹底追跡した。あちこち動くので名前を「寅次郎」。3年半にわたる調査で、 驚くべき事実が次々分かったという。

 最も感心したのは行動範囲の広さ。支笏湖の南側から、約80`離れた日高の 森まで。途中、農地や鉄道、高速道路があるのに、自在に駆け巡っていた。
 高速道路は人が行き来できるようにつくったアンダーパスを利用していた。 交通量の多い国道36号はすぐわきまで樹林が広がる場所に潜んで、深夜そこを 渡っていた。

 これほどの大移動にもかかわらず、寅次郎は青井さんたち研究者以外は誰にも 目撃されなかった。いつも人目を避けて行動していた。雄ジカを食べていたが、 人を襲うような気配は一度も見せなかった。冒頭の青井さんの発言は、それを 指摘したものだ。

 ヒグマにとって今年は特別の春になる。13年ぶりに道南で春グマ駆除が復活 するからだ。出没数と事故数の増加が理由。が、背景には森の荒廃がある。 人が捨てたごみがクマを呼び寄せている現実も。重い発信機をつけて寅次郎が 示してくれた貴重なデータを、クマとの共存にもっとうまく生かせないものか。

*ハムちゃんの独り言*
 この「クマの寅次郎」のことは、前にも本で読んだことがある。さてさて、 愛すべき「寅さん」でしょうか?北海道に住んでいるものにとって、 「もしかしたら身近に潜んでいるかもしれない」と、一抹の不安も感じさせる 行動。「いや、クマは人を避けているから安心」とも考えられる。 あなたはどちらをとりますか。僕は「まあ、心配ないよ。」と山に登っていますが・・・・。