星野道夫の死

北海道の山を登るときどうしてもヒグマのことが気になる。
ヒグマのことを考えるとき、どうしても星野道夫氏の悲劇的死が頭に浮かぶ。
この悲劇の状況を記した本が発行されているので抜粋してみる。


ベア・アタックス    S.ヘレロ著    (北海道大学図書刊行会)
    

      補章    星野道夫の死

 世界的な写真家星野道夫は、1996年8月8日カムチャッカ半島の南端にあるクリル湖で、 ヒグマに襲われて死んだ。星野を殺した雄グマはは彼が愛してやまなかった野生の動物ではなかった。

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 星野を襲って死にいたらせ、その一部を食べたクマはそれまでにも人間とかかわる経験を重ねていた。 このクマは、それまでの経験から人間というのは比較的無害であることを知り、 人間に対してますます大胆になっていた。そしてついに、星野を殺し、その結果、銃で撃たれて殺された。

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 作家のシェリー・シンプソンによると、星野道夫の追悼礼拝は青空が澄みわたった9月、 アラスカ州にある丸太造りのドッグ・マッシャーズ・ホールで行われた。 そこには星野の両親や何百人という友人たちとともに妻直子と幼い息子翔馬の姿もあった。 彼らが愛した亡き友星野道夫のために、多くの弔辞がたむけられた。 なかでもシンプソンが引用した星野自身の言葉は、彼が自然のなかで生きる野生のクマに何をみていたか、 もっともよく語っているのではないだろうか。

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 もしもアラスカ中にクマが1頭もいなかったら、ぼくは安心して山を歩き回ることができる。 何の心配もなく野営できる。でもそうなったら、アラスカは何てつまらないところになるだろう。

 人間はつねに自然を飼い馴らし、支配しようとしてきた。けれども、クマが自由に歩きまわる わずかに残った野生の地を訪れると、ぼくたちは本能的な恐怖をいまだに感じることができる。 それはなんと貴重な感覚だろう。これらの場所、これらのクマは何と貴重なものたちだろう。


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*ハムちゃんの独り言*
   『ライオンのいないアフリカの魅力は・・・?』
と、聞かれると、多くの人は「いないと魅力は半減する。」と答えるでしょう。
   『ヒグマのいない北海道の山の魅力は・・・・?』
   『ヒグマのいない日高の山の魅力は・・・・?』
と、聞かれると困ってしまう。人間社会と猛獣の共存共栄はできるのでしょうか?  一般論としてはわかるのですが、北海道の山を登っていて、やっぱりクマが恐ろしい。 星野氏のいう本能的な恐怖を貴重な感覚 として感じることなどとてもできない。 個人的にはやはりヒグマはいてほしくない。